中西 勇人 ゼミナール

研究課題 経済ゼミナールⅠ 「計量経済学(統計学入門)」
経済ゼミナールⅡ 「計量経済学(経済学の理解に基づくデータ分析)」
経済ゼミナールⅢ 「計量経済学(経済学と統計学を用いての卒業論文作成)」

研究内容

計量経済学

学生の皆さんが学んでいる経済学は、知識の積み重ねによって築かれてきました。これは理系分野の科学と同様です。たとえば中学校で落下運動の観測を通して、落下中は球の速度が1秒あたり秒速9.8m増加すると学び、この知識をもとに球を離した2秒後には球の速度が秒速19.6mであることを知ることができたでしょう。そして一度数式による表現を得れば、物体の運動を予測できるようになるわけです。

統計学は、この過程の中で、実験で得たデータを用いて値(たとえば9.8という値)を得たいときに役立つツールです。

これは経済学であれば、効用関数のパラメタの値を調べたり、

「大学で4年間学ぶことが労働者の賃金を上昇させる」

のような、理論モデルから予測される仮説を現実のデータを用いて検証するツールに当たります。しかし、経済学の分析対象である社会は複雑ですから、複雑な事情を考慮して分析するための追加的な方法が必要になります。この「追加的な方法」まとめたものが計量経済学だと思っていただいて良いと思います。たとえば、大学に入学・卒業する人はそうでない人と比べて能力が高かったり、学習意欲が高かったりするので、単純に大学卒業者と非卒業者の年収を比べても、大学で4年間学ぶことによる賃金への効果と、個人の意欲や能力の賃金への効果を混同してしまい、4年間学ぶことが賃金に与える純粋な効果を知ることができません。計量経済学ではこのような問題に対処する方法を学びます。

経済ゼミナールⅠ・Ⅱでは統計学と計量経済学について学び、Ⅲで卒業論文を作成します。

指導方針

テキストの輪読を行う予定ですが、内容は受講者の理解度に応じて判断します。また、講義のない期間などに課題を出します。経済ゼミナールⅢでは、計量経済学をデータに適用して卒論を書くことになります。また、経済学と統計学の性質上数学は必要になります。

指導教員プロフィール

専門分野 計量経済学
主要業績 Hayato Nakanishi, “How the change of risk announcement on catastrophic disaster affects property prices?”, in Springer series: Studies in Economic Theory (The economics of global environment – Catastrophic risks in theory and policy) edited by Armon Rezai and Graciela Chichilnisky, Springer, Chapter 25, 2016.
Hayato Nakanishi. “Quasi-experimental evidence for the importance of accounting for fear when evaluating catastrophic events”, Empirical Economics, 52(2), pp869-894 2017.
Tadao Hoshino, Hayato Nakanishi. “Economic valuation of environmental quality using property auction data: A structural estimation approach”, Land Economics. 92(4), pp 703-717. 2016.
担当講義名 計量経済学, 経済入門, 基礎統計学, 経済数学Ⅰ

教員より新ゼミ生へ

数式を使うことを怖がらないでください

統計に限らず、できるだけ数式を使わずに「わかる」ことを強調した書籍があふれています。これらの書籍を読むことは導入には役立ちますが、応用は困難です。著者が易しい言葉で難しい理論を説明できるのは、彼らが基礎理論を深く理解しているからです。もしあなたが、数式を使わずに説明をする著者のように、統計や経済を説明したければ、あなたもある程度は基礎理論を理解するほかありません。そのためには多くの場合数式を使った演習が必要です。しかし、計算演習やその先にある経済や統計の理解は決して無駄になりません。数学は勿論ですが、その応用である経済学や統計学もまた知識を積み上げていくことで分かる内容がどんどん広がっていく学問です。最初は一つのイコールの意味が分かるのに5分かかっても、少しずつ短い時間で理解できるようになっていき、理解できる内容が勉強によって必ず広がります。(たとえば、皆さんが2次方程式を解けるのは等号の意味と因数分解と平方根を理解しているからです。)同様に、すぐに学ぶことをやめてしまった人と、学び続けた人では経済や統計を通して見える世界が全く異なります。高々90分の入学試験のための勉強では、解くのに時間のかかる数学の問題を真面目に考えることは愚かな選択だったかもしれませんが、これからの例えば10年間を賢い自分として生きるためには、たとえ数式が出てきたとしても、ある程度教科書と向き合って勉強して損はしないと思います。

選考方法

レポートと面接による選考を行います。(レポートの内容は説明会で指示します。)

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