岩田 真一郎 ゼミナール

研究課題 経済ゼミナールⅠ 「都市経済学(実証分析入門)」
経済ゼミナールⅡ 「都市経済学(都市に関わるグループ研究)」
経済ゼミナールⅢ 「都市経済学(都市に関わる卒業論文の作成)」

研究内容

都市は人口や面積に応じて大都市,中核市,中都市,小都市など様々な大きさに分類されます.大きさの異なる都市は,経済活動の特長も異なり,抱える問題も異なってきます.都市経済学は,それぞれの都市における経済活動の特徴を明らかにし,その活動によって生じた問題の対処方法を考えます.

このゼミナールは,各自が持った問題意識を基に都市の特長や都市が直面する課題についての仮説を立て,データを用いてこの仮説を計量経済学的に検証し,独自性のある卒業論文を完成させることを目指します.

ゼミナールⅠでは,データを分析できる力を養うために実証分析用のソフト(主にR)を利用して回帰分析の使い方を学びます.同時に,データを地図上に示す方法も実践します.

ゼミナールⅡでは,仮説を立てる力や論文作成の力を養うために,3名から5名程度のグループをつくり,各グループで研究テーマを自由に設定して,研究論文を作成します.

ゼミナールⅢでは,ゼミナールⅠとⅡで習得した知識や技術を基に各自の卒業論文を完成させます.

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指導方針

ゼミナールⅠでは,実証分析の理論を学ぶわけではなく,実証分析を実践します.分析手法についてはテキストに沿って私が星野・田中(2016)に沿って解説します.その後,各自でデータを用いて実証分析を実践することになります.実践にはパソコンが必要になります.ノート型パソコンを所有しているゼミナール生は是非ご自身のパソコンを使用してください.所有していないゼミナール生は大学所有のパソコンや研究室にあるパソコンなどを貸し出したいと思います.最初のころはRの操作に戸惑うことが多いですが,忍耐力があれば乗り越えられます.なお,統計データを地図上に示す方法についてチュートリアル(Rによる地理空間データの可視化)を作成していますので,是非参考にしてください.

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ゼミナールⅡでは,グループ内の議論を中心に,研究論文の作成に励みます.グループ内で仮説設定,データ取得,分析,分析結果の考察に取り組みます.(全体ではなく)グループ間の発表機会を設け,グループ間で質疑応答してもらいます.この少ない人数の中での発表により一人ひとりの発言機会を確保したいと思います.ゼミナール全体の発表機会も2回から3回設けます.その際に助言するのが私の役割になります.

ゼミナールⅢでは,最初に卒業論文の研究計画について発表してもらいます.その後,卒業論文の作成に入ります.ゼミナールの時間は,各自の研究計画の遂行に用います.定期的に,進捗状況を私に報告してもらいます.ゼミナール全体の発表機会も3回から4回程度設けたいと考えています.

都市経済学は経済学の基礎理論,特にミクロ経済学の理論を応用した学問です.ゼミナール中に都市経済学の(基礎)理論を学ぶ時間はとりません.したがって,ミクロ経済学,都市経済論の授業を積極的に履修してください.都市経済学については高橋(2012),山本(2022)が参考になります.また,データを扱う上で,統計学や計量経済学の知識が重要になります.この2科目についても,履修されることを望みます.

参考書
星野匡郎・田中久稔『Rによる実証分析-回帰分析から因果分析へ』オーム社(2016年)
高橋孝明『都市経済学』有斐閣ブックス(2012年)
山本和博『大都市はどうやってできるのか』筑摩書房(2022年)

指導教員プロフィール

専門分野 都市経済学
主要業績 Iwata, Shinichiro; Kondo, Keisuke. “The spillover effects of compact city policy on incumbent retailers: Evidence from Toyama City.” RIETI Discussion Paper Series 21-E-085 (2021).
岩田真一郎『ミクロ経済学ワークブック-アクティブに学ぶ書き込み式』新世社(2016年)
Yukutake, Norifumi; Iwata, Shinichiro; Idee, Takako. “Strategic interaction between inter vivos gifts and housing acquisition.” Journal of the Japanese and International Economies 35 (2015): 62-77.
Iwata, Shinichiro; Yamaga, Hisaki. “Rental externality, tenure security, and housing quality.” Journal of Housing Economics 17(3) (2008): 201-211.
岩田真一郎・中村和之「地方公共交通は復活するか-富山市への提言」『都市住宅学』,58巻,9-15(2007年)
担当講義名 都市経済論,ミクロ経済学

教員より新ゼミ生へ一言

私は学生時代,東京,京都,大阪に住んでいました.人口密度の高い大都市では,交通は混雑し,住宅価格は高くなる傾向にあります.これが豊かさを実感できない要因と考え,なぜこのようなことが生じるか,どのようにすればこの問題を解決できるか経済学を夢中で勉強しました.今も私の研究動機は住宅問題を中心とした都市問題の解消です.一方,最初の大学の職は中核市の富山で得ました.ここでは,交通混雑の問題も住宅価格の問題も大都市ほど深刻ではありません.したがって,学生に大都市で生じる問題を伝えてもなかなか心に響かない様子でした.しかし,人口密度が低いことが大都市とは異なる問題を生じさせていることを知りました.モータリゼーション,中心市街地空洞化,シャッター通り,買い物難民,・・・,このような言葉を聞いたことはないでしょうか.富山では,この地方(都市)の問題をゼミナール生と一緒に考えていました.神奈川大学には2021年4月に異動しました.ゼミナール生が持つ都市問題の関心は,出身地の違いを反映して様々です.現在は,ニュータウン,新幹線,犯罪をテーマにグループ研究を進めています.今後は,一人ひとり(またはグループ)の関心に合わせて,ゼミナールを運営する予定です.

みなさんも現在住んでいる地域や過去に住んでいた地域で「住みにくさ」を感じたことはありませんか.その感覚を大切にしてください.そして,どうして住みにくいのか,どのようにすればその住みにくさを解消できるのかを(経済学を用いて)考えたいならば,ぜひこのゼミナールで一緒に考えましょう.

選考方法

書類選考(主に志望理由)で決定します.

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