NEWS

ニュース 在学生 2023.01.23

みずほ銀行チーフマーケットエコノミスト・唐鎌大輔氏による講演会が行われました

2023年1月19日(木)、本学横浜キャンパスにおいて、みずほ銀行チーフマーケットエコノミストの唐鎌大輔氏による講演会を実施しました。演題は、「主要通貨(ドル、円、ユーロ)2023年の展望~円安は終わったのか?~」でした。

2022年のドル/円相場の年間値幅は38.47円の円安でした。この値幅はプラザ合意があった1985年以来で3番目の大きさですが、これまでドル/円相場が大きく変動する時は円高であったのに対し、唐鎌氏は「今回は円安であることが大きく異なる」と指摘。この背景として、「ドル全面高」と「円全面安」の2つの要因に注目する必要があるとしました。このうち、ドル全面高要因については米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止が見込まれる中で、はく落しつつある一方で、「円全面安の要因が除去される保証はどこにもない」と唐鎌氏は強調しました。

円全面安の要因が残るのは、2022年で約20兆円に上った貿易収支赤字が今後も残存することが見込まれるためです。円安になったことで国内生産の競争力が高まり、製造業が国内に生産拠点を戻すという見方もありますが、唐鎌氏は「人口減少で労働力を確保しにくいこと、自然災害の可能性などの問題があり、そう簡単ではない」とし、日本はもはや円安で輸出が増える国ではなくなったと説明。このため、購買力平価でみて大幅な円安になっても、円高方向に調整する力が働きにくくなったと解説しました。

コロナ禍が落ち着いた中で、インバウンドによる旅行収支の受取増加(サービス収支の赤字縮小)が見込まれるものの、日本入国にかかわる規制が残っていることが問題なうえ、貿易収支赤字をカバーするには力不足としています。そのうえで、国際収支の発展段階説でみると、現在の日本は財・サービス収支の赤字を第一次所得収支の黒字でカバーすることで経常収支の黒字を維持する「成熟した債権国」にありますが、唐鎌氏は、経常収支赤字化する「債権取り崩し国」への移行が始まったのではないかと指摘し、中長期的なドル/円相場を見通すうえで、こうした視点が重要と説明しました。聴講者からのユーロの見通しに関する質問に対しても、唐鎌氏はドイツの貿易収支に注目して欲しいと語っていました。

今回の講演をきっかけに学生の皆さんが、円/ドル相場の背後にある日本経済の課題について再認識してもらえればと思います。

■ 関連リンク

みずほ銀行チーフマーケットエコノミスト・唐鎌 大輔氏による公開講座のご案内